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学生の時にサークルで書いた、FPSのこれまでの潮流を説明した文章です。
5年以上前に書いたので、今見るとアラや時代遅れになっている部分もありますが、
枯れ木も山の賑わいと言うこともあるので、掲載します。

FPSの曙


 その昔、FPSの マルチプレイと言えば二人から四人程で行う、比較的狭いマップの中に落ちている武器やアイテムを拾い、
自分以外は全てが敵になるデスマッチが主流であった。

そのようなシステムで戦う場合、マップの構造を憶え、
重要なアイテムを連続して取れるような巡回ルートを確立する事が重要だった。
何故なら両者とも命中率が同程度ならば攻撃力二倍や体力二倍などのアイテムを持っている方が勝つので、
必然的にアイテムの取り合いが争点になって来るのである。

上級者となればアイテムを取得してから復活するまでの時間を覚えてアイテムを取る時間をわざと遅らせ、
マップのアイテム出現時間を完全にコントロールすることさえも可能なのである。

また、武器も強力なものは弾速が遅く、動いている相手に当てるのが困難な物が多い上にプレイヤーの移動速度は高速で、
初心者にはコントロール困難なバグ技一歩手前のジャンプなども幾つか存在し、上級者と初心者との垣根は絶望的なほど開いていた。

なので初心者が上級者と戦うと一個もアイテムを取れずに、0対100な どのスコアが出 ることも珍しく無く、
上級者同士の戦いでは互いの巡回ルートを敵の行動と装備から読み合い、
自分のルートが不利と判断すれば別のルートに切り替えるという高度な心理戦が展開されていた。

正に強い者が一人で全てを支配し、弱い者は何も持てずに死んでいくという
専制政治の世であった。

専制時代の終わり


 しかし、PCの スペックの発達に伴い、マルチプレイに参加出来る人数が増えて8人 や16人程になると状況が変わってくる。
幾ら上級者でも15人も敵が居ればマップを完全にコントロールするのは不可能であるし
戦闘自体が多人数で行われ、当初戦闘に参加していたプレイヤーが生き残るのが困難になり、

デスマッチという形式自体が大人口の戦いにはそぐわない事が明らかになって来る。
代わりにプレイヤーを2チームに分けて両軍で戦うというチームデスマッチが脚光を浴び、
仲間同士で協力する事が重要になり、アイテムを一人で全て取得することは嫌われる行為になって行った。

しかし、チームワークが重要と言っても、FPSプレイヤーというのは元々個々の戦闘力を重んじるも のである。
それはデスマッチの時からの伝統でもあったし、シングルプレイでは1人でモンスター100体を皆殺しにする様なマップが普通だったので、
チームワークなど形成される訳が無かった。

それでもチームワークが上手く発揮されれば、それが無いチームに大差を付けて勝利する事が可能であったし、
仲間同士が立てた作戦が成功すれば勝利の歓喜はより大きなものとなるので、チームワークはその後も求められて行く事になる。

団結の力


 チームワークを喚起する為に使われた方法として、プレイヤーの職業を分化させるという物がある。
それぞれ特定の能力に秀で、違った武器を持つクラスに分かれる事で、短所を補い合い、長所を生かしあう事でチームワークを促進する仕組みであった。

その他にも、チームとして敵を倒す以上の共通の目標を作り出すことが有る。
例えばフラッグ戦で、敵陣深くに有るフラッグを奪い自陣に運んでくることで自軍と運んだプレイヤーのポイントとなるルールで、
チームワークと個人の能力を同時に評価する事が出来る。

更に言葉が通じなかったり、戦闘中でチャットを打ち込めない場合にも会話が出来る様にボタンを押すだけで命令が出せるラジオコマンドも作られた。
また、シングルプレイも一人で何百人もの敵と戦うのでは無く、
仲間と共に戦うマップが増え、武器も未来兵器から実銃が使われる事が多くなり、移動速度も現実的な速さになって来る。

以前の様に初心者と上級者との間には絶望的な壁は無く、初心者が三人掛かりで行けば上級者を倒せる事も珍しくは無くなって来た。

大規模戦闘の時代へ


 さらなるスペックの発達とチームワークの追求によって行われたのが、
乗物の導入とマップの巨大化、数倍ものプレイ人数の増加だった。
単なるジープから戦車、戦闘ヘリ、戦闘機まで、相乗りして戦地に向かう事で多人数が同時に戦ったり、
兵器を戦闘の中心にして戦うことで戦況を変化させたりと、戦闘は以前では考えられない程大規模になって行く。

もはやFPSの 上級者というのはマップをコントロールする者ではなく、戦局を読んで様々な武器や兵器を使いこなし、チームの為に貢献しながら最大限戦闘を生き抜く者へと変化していった。

現在、FPSで チームワークを促進させる為に主流になっているルールは、指揮官の決定である。
チームに一人、または数人に一人指揮官を決めることで効率的なチームワークを発揮しようという魂胆だが、
この試みは今のところ余り上手く行っていない。指揮官に従わなくてもペナルティが存在しないので、命令に従うかどうかは個人任せなのだ。

ならば命令に従わない者に罰を与えられるような仕組みを作れば良いと言うかも知れないが、
前述のようにFPSと いうのは元来個人の能力を重んじるものであり、過度の上下関係はFPS本来の良さが失われる恐れが有る。
今後も続くであろうFPSの 歴史は、一体どのような流れを辿っていくのだろうか。